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最高裁判所第二小法廷 昭和51年(行ツ)65号 判決 1976年10月01日

東京都大田区大森東五丁目一二番六号

上告人

田野口等

右訴訟代理人弁護士

中條政好

東京都大田区中央七丁目四番一八号

被上告人

大森税務署長

高井愛介

右指定代理人

五十嵐徹

右当事者間の東京高等裁判所昭和五〇年(行コ)第二四号所得税更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和五一年三月一五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中條政好の上告理由について

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、また、その判断の過程に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊 裁判官 本林讓 裁判官 栗本一夫)

(昭和五一年(行ツ)第六五号 上告人 田野口等)

上告代理人中條政好の上告理由

(一) 事実

一、上告人は本代理人に対し、昭和四〇年(行ウ)第五三号及び昭和四二年(行ウ)第一六九号この両事件の訴訟代理を委任し、着手金(手数料)及び前払訴訟費用として左記の通り支払い、本代理人は之を受取つた。

一、金二〇〇、〇〇〇円 昭和四一年一〇月一〇日

一、金一〇〇、〇〇〇円 昭和四二年四月五日

一、金一〇〇、〇〇〇円 昭和四二年一二月一八日

計 金四〇〇、〇〇〇円

二、前記弁護士費用として支払つた金四〇万円につき上告人は昭和四一年分所得税申告に当り二〇万円を、昭和四二年分所得税申告に当り二〇万円をそれぞれ雑損控除として計上し、申告した処、否認され、更正されたものである。

(二) 上告理由第一点

一、一審裁判所は被上告人の主張を採用し、訴訟費用は雑損控除に当らないし(法第七二条)又代理人に支払つた金四〇万円は当該年度の所得形成に寄与していない、だから必要経費にはならない(法第三七条)と判示し、上告人の請求を棄却している。

二、処が上告人は昭和四三年十一月十三日審査請求を行う際、雑損控除として申告が誤りであることに気付き之を雑損失と訂正している。従つて雑損控除として申告したが要件を欠くので認められない。だからその申告を否認して更正したとする当該賦課処分は民事訴訟法第三九四条にいう判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令に違背する判決である。

(三) 上告理由第二点

一、所得税法第四五条を設け、家事関連費を規定し更に同第五〇条を設けて繰延資産を規定し、同第五一条を設けて資産損失の必要経費算入を規定している。

二、しかも繰延資産の範囲に関しては施行令第七条第一項第四号八、において、役務の提供を受けたため支出した権利金、その他は之を必要経費に算入することに改正されている。原判決はこの改正を無視している。

(四) 上告理由第三点

憲法第八二条は対審を規定し、民事訴訟法第一四一条は当事者の責問権を規定している。然るに原判決は処分の適否だけを判断し上告人の主張をかえりみていないし、又重要な判断に対し理由が附記されていない。

以上により上告をした次第である。

以上

(添付書面省略)

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